前回書いたことと同じようなことだが、結局この世で一番大事なのは家事だと、数十年この世で生きてきてようやく気がついた。
衣食住というのも家事のことであり、要は自分の棲み家が清潔で快適なものでありつづけるようにすることだ。
こんな当たり前のことに気がつくのに五十年近くもかかっちゃっているわけだが、たぶん昔の人は先祖代々同じ家で同じ場所に住んでいて、季節毎に必要なものは揃っていて、生活の中で自然と身に付けていたんじゃないかと思う。
僕なんかは先祖から何も受け継いでおらず、身一つで先祖とは何の縁もない知らない土地で何の縁もない家に住んでいるせいで、こんな当たり前のことも自分で発見しなければ分からない、だから五十年もかかってしまったというわけだ。
この家のこの風呂、この台所、この居間、この納屋をどういうふうに使うのか、掃除するのか。それが同じ特定の一つの家で先祖と一緒に暮らしていると自然と分かる、そういう話。
僕の場合、僕の先祖とは完全に無縁のアパートの101号室で、どうやって暮らしたらいい、誰も知らない、何も分からない。101号室の風呂はトイレは台所は。そんなことの繰り返しで知恵は生まれず、生まれた知恵はどこにも伝わらず。